ミドリシジミを近くからレンズ越しに見ていると、たまにパルピ(下唇鬚・かしんしゅ) を開いていたり、動かしている個体がいる。そういう写真を何枚か。
パルピ(下唇鬚)について
パルピというのは上の写真でいくと、複眼の前にある黒くてツンッと上を向いた突起のような器官のことで、蝶の種類によって目立つものもいれば、出っ張っていなくてどこにあるのか分からないようなのもいる。
目立つ代表としてはテングチョウがあげられる。
名前のとおり、天狗の鼻のようにパルピが伸びており、複眼の直径の3倍、触角の半分ほどの長さがある。パルピの付け根あたりから口吻を伸ばして吸蜜している。
横からみると角のように1本突き出しているだけに見えるのだけど、前から見ると実は左右で1対の器官になっている。
ちょっと古い写真になるが、ミズイロオナガシジミを前からマクロレンズで見たところ。黒い複眼の前に上を向く牙のようなパルピが立ち上がっており、その根元あたりに黄色い口吻が格納されているのが見える。他の写真も見てみたが、ミズイロオナガシジミのパルピは、ミドリシジミのそれよりも若干長いような印象。
実のところ、パルピの役割はよく分からない。食べ物の味をみるためとか、口吻や複眼を保護するためとか諸説あるようだ。
Butterflies of Singapore (シンガポールの蝶) というサイトに、いろいろな蝶の顔面写真やパルピのイラストや考察が書かれており参考になります。
パルピを使うミドリシジミ
以下はパルピを動かしていた個体の写真から分かりやすいように切り出したもの。
なんとなくパルピが長いような、立てているような個体が草の上を歩いていたのでしばらく見ながら撮影したりしていた。
やがて、複眼にかかった細い蜘蛛の糸が気になるのか、パルピを動かし始めたのに気が付いた。
ふだんは上を向いているパルピが左右分離しており、しきりに目の前を払っているようだった。蜘蛛の触肢のように、独立して自由に動かすことができるんですね。
横から見るとこんな具合になっていて、3対の脚とは別に腕もあるような印象。
別の個体(メス)の開翅シーンを写したものをよく見ると、やはり左右のパルピを独立して動かしていた。画像をクリックすると、若干大きく表示できます(ブラウザの表示領域に依存)。
右手(?)で複眼をこすっているような感じ。
葉の上の液体(水?)に口吻をつけてなめているところ。パルピは若干開き気味になっており、その下あたりから黄色い口吻が伸びている。
ほかの蝶ではどうなんだろと思って、先日ヒオドシチョウの顔を写してみたが、毛深くてよく分からない。ただ、吸蜜中には目立つ口吻もどこにあるのか分からないから、左右に分かれたパルピの根本あたりにうまく格納されているのでしょう。
蝶や蛾を近くから撮影する機会には複眼にピントを合わせることが多いのだけど、パルピにもいっそう注目したくなってきた。その代わり、よりいっそう翅がボケた写真ばかりになりそうな予感もしますね。