ここ数年の6月前半に見た蛾をいくつか。
カギバガ科
6月に山がちの場所や森林なんかに行くと、よくカギバガの仲間を目にする。カギバガの仲間には、鳥に食われない系の偽装をほどこしたものがいろいろいて楽しい。
いずれも翅の紋や胸部腹部の色合いからウェットな鳥の糞が流れたように見える模様をもつ蛾で、絹のように?翅が薄い印象。鱗粉のサイズが違うのだろうか。モンウスギヌカギバの方は、糞にハチかアリが寄ってきているような紋様をもつものとして特に有名。
マダラカギバとヒトツメカギバもやはり鳥糞系。ヒトツメの方はけっこう近場でも見かける。
翅が透けて見えて、とてもきれいなホシベッコウカギバ。ヒトが見ると何かに偽装しているようには見えないが、鳥から見ると緑の葉にひろがった糞に見えるのかも。
前翅、後翅ともにスカシが入っているスカシカギバ。こちらはムシ食いあとのある枯れ葉だろうか。
ヒトが見るとひと目で蛾なのだけど、これも枯れ葉のふりをしているのかも。あるいは鳥から見て枯れ葉のようだから、今まで生き残ってこれたのかもしれない。
シャクガ科
黒焦げになったような色合いのチャノウンモンエダシャク。民家の白い壁にとまっていたのでとても目立つ。
大きくて迫力を感じるウスイロオオエダシャク。前翅の焦げ茶色の斑紋が大きな目玉のような印象。
5月下旬くらいからよく見る大型のオオバナミガタエダシャク。後翅の波形の線が白く縁取りされている。触覚からすると、1枚目がメスで2枚目が櫛毛状なのでオスだろう。薄暗い中、コナラやアラカシの幹にとまっているとほとんど目立たない。
同じ時季に同じような場所にでてきて、翅の形状や大きさも似ているウスバミスジエダシャクといつも迷ってしまう。
ナミガタエダシャクかも?
横線や斑紋がはっきりしないが、後翅に白抜きの紋があるのでおそらくウスバミスジエダシャクだろう。
これはどっちだろう。後翅の斑紋はなんなく白抜きに見えなくもないのだけど、前翅の外側の線(外横線)があまり前側(翅頂側)に曲がり込んでないからオオバナミガタエダシャクか。
この2種もよく似た印象で識別しずらいのだけど、前翅の中央のM字マークの周囲の暗色のところが丸っぽいのがオオトビスジエダシャク、あまり丸くなく横線に沿って暗い帯がある方をフトフタオビエダシャクとしたが、果たしてどうなのか。
ケヤキの幹と壁にとまっていたクロクモエダシャク。大きくて目立つ。なぜこういう和名になったのか興味深い。黒い雲が流れているような模様なので?
アジサイにとまっていたツマキリウスキエダシャク。かどがしっかりしていて見栄えがいい。前翅の縁にある斑紋で判断した。
すっきりした白地に褐色の帯が走るトラフツバメエダシャク。高尾山から稲荷山コースで下りてくる途中で遭遇。このコースは遠足の小学生たちが大勢でホコリを立てながら歩いてることが多くて敬遠気味だったのだけど、最近はどうなのかな。
昼間から活動的なフタテンオエダシャク。5月から7月にかけてよく目にする。前翅と後翅の線がきちんとつながるように翅を開いてることが多い。
いつも悩ましいニセオレクギエダシャク。この個体は翅の中央部に黄色い鱗粉が帯状に残っている。
ウメエダシャクとヒロオビトンボエダシャクは腹の色や模様、翅の印象もよく似ていると思う。ウメエダシャクの方がちょっと小さめで、翅の後縁が波模様というか丸い紋を並べたように見えるので区別できる。
頭から腹にかけての黄色と黒の並びは、蜂をイメージさせる警告色で、ヒトにとっても踏切の柵や遮断器と同じ色合いである。でも翅が白黒の蜂はいないのだが、飛んでいるときには何か視覚的な効果があるのかもしれない。
水玉模様?がきれいなヒョウモンエダシャク。目立ちそうなのだけど、なかなかお目にかからない。シロジマエダシャクも同じだが、まだら模様にはなにか敵(捕食者)をあざむく効果があるのかもしれない。
腹部が白い縞模様なのでシロジマエダシャクなのだろう。なかなかカラフルだった蛾。西武ライオンズの本拠地メットライフドームのわりと近くで撮影。ナイター中継を見てると、ドーム内を蛾や蝶が舞っていたりすることがわりとあって、思わず種名を考えたりしてしまう。
尾状突起が目立つウスキツバメエダシャク。クヌギか何かのちょっと高いところにとまっていた。よく似た仲間が多く顔も見えないので、別のツバメエダシャクかもしれない。
尾状突起の付け根にある2つの赤い斑点が目玉、尾状突起が口吻?を表現しているのかもしれない。アカシジミやミドリシジミと同様に敵から逃れるための偽装なのかも。
前後の翅の中央がくぼみ、縁が上に反っていて、底の薄いお皿のような形状になっていた。ほかに特徴もないが小型なのでチビという名前になったのか。
前翅後翅の波状あるいは歯車状のギザギザの線が、頭を中心に取り巻いているからハグルマか。色はオレンジがかった黄色といったところなのだけど、フラッシュを使っているので若干暗めの色合いになった。
クヌギやコナラの生えた雑木林でアカシジミなんかを探していたら、ちょっと大きめの蛾が飛んだので追って行ったらケヤキにとまったので撮影。かなりカラフルで擦れもないきれいな個体だった。フラッシュを使って撮影。
頭の先のパルピから腹部に向けての背を白いスジが走るセスジナミシャク。ちょうど頭が手前になっているが、翅の後縁から鳥糞がダラダラ流れ落ちてるような図案だろうか。この状態で最大横幅が15mm程度と小さい個体だった。
シャクガ科ヒメシャク亜科に分類される蛾は小さいものが多く、5メートル程度以上離れていると見て見ぬふりをしてしまうことが多い。写してもなんだか分からないことがよくあるし。そんな中で比較的分かりやすいキオビベニヒメシャクだろうと判断した。
ちょっと距離があると、OM-Dに420mm(300mmF4.0 + MC-14)を着けて撮ってもこんな具合にしかならない。この蛾は翅に色があるので比較的目立つが、以下の各種は遠くから見るとほぼ白い何か、というふうにしか見えなくて、何かの生物、おそらく蛾かもと思ってレンズを向けてファインダーをのぞくと鳥が残した白い糞ということがしばしば。
比較的近くから写すことができた以上のヒメシャク3種は、翅の形状やゴマのような黒い点、横線の走り具合などで種名を判断したが、あまり自信がない。
これくらい横線や黒点がはっきりしていると、名前を探しやすい。高尾山薬王院の参道にならぶ赤い灯籠(京王電鉄提供)にとまっていた。最初にのせたウスギヌカギバと同じ場所。
アオシャク亜科に分類される蛾は、名前のとおり青い(緑ともいう)。残念ながら遭遇する機会が少なくてあまり撮影できていない。
ミゾソバの葉の上でジッとしていたカギバアオシャク。とても美しかった。毎年行く場所なのだけど、見たのはこのときだけ。
ヤガ科
ヤガ科に分類されている蛾はとても多く、その上に特徴を見分けられない種もたくさんいて名前を探すのに手間取ったり、あきらめたりするものが多い。
ヤガ科アオイガ亜科のフタトガリアオイガ。まだ白くなっていないハンゲショウの若い葉についていた。残念なことに、というか気が回らないことに超望遠レンズを使ったアップの写真しか写していなかった。近寄れる範囲から肉眼で見ると、ハンゲショウの葉先がちょっと枯れているようにしか見えず、ここに生き物がいるとはとても思えなかった。
コヤガ亜科のフタイロコヤガ。頭の先から翅の先(翅頂)の部分まで、だいたい12mm程度。
幼虫の食草がクヌギやコナラということなので、わりとよく見るとヨトウガ亜科のシラオビキリガ。よく見るといってもここまで新鮮そうな個体に遭遇するのは珍しくて、だいたいは色も線も抜けたようなのが多い。
昼間からわりと活発に飛んでいた、ヨトウガ亜科のチャオビヨトウ。おしりをあげている。
キンウワバ亜科のキクキンウワバは翅の黄色というか金色に輝く大きな紋が特徴的。
シタバガ亜科のニジオビベニアツバ。もうちょっと派手な色彩を想像させる名前。
やはりシタバガ亜科のシロテンツマキリアツバ。前翅は前縁側が上に反っていて、後翅は逆に後縁側が上に反っているような、半端な折り紙のような姿でとまっていた。見えにくいがパルピ(下唇鬚)もけっこう長い。
シャクドウクチバを横から見たところ。パルピが上に反っているのが分かる。翅表は紫がかった焦げ茶色といったところだった。
パルピが長いといえばアツバ亜科のナミテンアツバも長い。
こちらはクルマアツバ亜科のキイロアツバだと思うのだけど、間違っているかも。
やはりクルマアツバ亜科のツマオビアツバ。擦れ気味で斑紋が見えにくいが、写真では下側になる太い線が直線的に翅頂のちょっと上に達していることなどから判断した。
セセリチョウとよく似た雰囲気のタバコガ亜科のツメクサガ。草の上を昼間に飛んで花にとまっては吸蜜していた。
カラムシかラミーか何かの葉を熱心に食べていたフクラスズメの幼虫。「スズメ」と付くがスズメガ科ではなくてヤガ科に分類されている。成虫を見るのは夏から秋にかけてになる。
シャチホコガ科
シャチホコガ科に分類されている蛾はとじた翅の後ろから太い腹の先の毛が見えていることが多い。高尾山の1号路で遭遇したので指にも乗せてみた。
わりとスマートな印象のハイイロシャチホコ。灰色というよりマーブル模様のパンという印象の色合いだった。
ブナアオシャチホコと思いますが、写りが悪かった。
ゴマダラシャチホコだと思います。
スズメガ科
6月になるとよく目にするコスズメ。外で見ているときはセスジスズメかなと思っていたが、セスジスズメに比べて背筋がしゃんとしていないような。
緑色の迷彩柄が美しいウンモンスズメ。幼虫はケヤキも食べるということらしく、5月の上旬から8月にかけて近所で見かけることもある。大きさがマチマチで、この個体はとても小さかった。雌雄の違いによるのだろうか。
ドクガ科
このブログではお馴染みのキアシドクガ。同じ公園で見ていても年によって成虫が出現してくるタイミングが1,2週間ほど前後するようで、5月中にほとんど終わってしまったときもあれば、今年のように6月になってもたくさん飛び交っているときもある。いずれにしろ、はかない命よのと感じてしまう。
ヒメシロモンドクガの幼虫は背中、前、腹部とあちこちに毛束があって面白い。毒はないらしいが、手に乗せるのは遠慮したい。
参考用にヒメシロモンドクガの成虫(6月下旬撮影)。
ヒトリガ科
カノコガ亜科のカノコガもウメエダシャクやトンボエダシャクのように胴体が黄色と黒のワーニングカラーをもつ。背側から見ると黄色いスジが2条だが、横から見るとさらに追加されている。瀬川からみたとき、腹部と胸部のあいだの黄色線の効果で、蜂のように腰がくびれているかのように見える。触覚も蜂っぽいかな。
昼間から活動的なヨツボシホソバ。写真のように黄色い翅に黒い点があるのはメスで、オスは黒点もなくもっと地味。
ちょっと遠かったが、たぶんヨツボシホソバ(またはその仲間)のオスがクリの花で吸蜜していた。
ヒトリガ科コケガ亜科のホシオビコケガ。黒い点々が濃かったり薄かったりする。
いずれもヒトリガ科と思うのだけど違う種かもしれない。
ツトガ科
ツトガ科ノメイガ亜科のワタヌキノメイガとホシオビホソノメイガ。と思いますが、まったく自信がない。
ノメイガ亜科のクロスジノメイガ。朝日を浴びていた。
ビロードハマキ
ハマキガ科のビロードハマキ。派手な色彩。写真左側が頭になるが、反対側の翅頂のあたりが目立つ色彩になっているので、捕食する側はこちらが頭と思って食いつき、結果としてビロードハマキは生き残れるということかも。
モモブトスカシバ
スカシバガ科のモモブトスカシバ。公園のちょっとした林の暗い下草にとまっていた。飛んでいるところを見たことはないのだけど、スカシバらしく透明の翅をもっているらしい。
クロシタアオイラガ
小さいけど櫛毛状の触覚が立派なクロシタアオイラガ(イラガ科)。
きょうのまとめ
まとめてみると、5月下旬から6月にかけてはけっこう撮影していた。7月になると梅雨と夏の暑さに負けてガクッと減ってしまうのだが。