東京では、4月の半ば過ぎから登場するギンイチモンジセセリ。ヨシやススキがしっかり残っている河原や田んぼの周りにいる。
「ギンイチモンジ」という名前は、黄土色の後翅に鮮やかな白い一本線が走っていることからきているのだろう。この白い線は、春に出てくる個体の特徴で、夏に出てくるのではあまり目立たない。
写真のように翅を立ててとまることが多い。内側にあたる前翅の黄土色の縁の部分が少し見えているが、その内側は焦げ茶色をしている。次の写真のように、翅の表側も同じような焦げ茶色をしている。
少し翅を広げて日を浴びているところ。表側は特に模様もなくて地味な印象。
枯れた葦の中にいると、特に天気がよいと翅裏の色が周囲に溶け込んで、なかなか見つけられない。探索しながらゆっくり歩いていても、足元から飛び立たれたりしてびっくりしてしまう。
この蝶が飛んでいると、外側の明るい黄土色と内側の焦げ茶色が交互に点滅しているように見える。飛び方はひ弱で直線的ではなくて、クロスジフユエダシャクの♂がパートナーを探しているときのような感じでヘロヘロと飛ぶ。そして、枯れた葦の間に紛れこんでいくので、見失ってしまうことが多い。
カラスノエンドウで吸蜜。ギンイチモンジというが、こうしてみると後翅の後端も白いから「ニ」という気もする。ギンニノジセセリではさまにならないか。実際のところ、飛び回っているうちに後端側の鱗粉は落ちてしまうんだろう。
上から見たところ。目玉の前に、鼻が2本突き出しているように見えるが、これはパルピ(下唇鬚・かしんしゅ)と呼ばれる器官で、テングチョウが長くて有名。テングチョウは目玉より前から伸びているが、ギンイチモンジセセリの場合はメダマの上から伸びているように見える。
こちらは名前が似ているというだけしか関係のない、イチモンジセセリ。おそらく、もっともポピュラーなセセリチョウで、人によっては蛾の仲間だと思っていたりする。
ギンイチモンジの方が翅も頭も一回りほど小さい。
おまけでちょっと前に見たコチャバネセセリ。大きさはギンイチモンジとあまり変わらない程度で、よくいるセセリチョウの一つ。まだ羽化して日が立っていないのか、前翅(内側の翅)の先端に金粉が残っていた。
イチモンジセセリやチャバネセセリもそうなのだけど、とまっているときはこういう具合に後翅をひらき、前翅を半ば立てて、翅の表側を見せた姿勢でいることが多い。色の濃い側を日に当てて体温を高めているような気がする。それに対して、ギンイチモンジセセリでは翅をしっかり閉じてとまっていることが多いように思う。
今回載せたギンイチモンジセセリは、すべてMZD40-150PRO + MC-14の210mm端を使って撮影。こちらが動くと敏感に反応して飛び去るので、マクロレンズを使えるような機会はなかった。