ここ数年の5月の後半に写した蛾をいくつか。5月後半から6月はおもに蝶を見るために見回りに出る回数が増えるので、結果として蛾を目にする回数も増えていて、いろいろと写していた。
シャクガ科
5月から7月にかけてよく目にするフタテンオエダシャク。林縁の草にとまっていることが多かった。前翅後翅の線がつながるよう、きちんととまっている。
ヒロオビトンボエダシャクは、翅が細くて腹が長いからトンボという名前をもらったのだろう。近縁種にトンボエダシャクというのもいるようだけど、黄色と黒の腹の模様からしてヒロオビばかり目にする。
翅は白いが顔がオレンジ色のウスキツバメエダシャク。尾状突起が長めなので、ウスキツバメエダシャクと判断したが、外観が似たフトスジツバメエダシャクやシロツバメエダシャクなのかもしれない。
ウスアオエダシャク。通勤時に通る公園の看板にとまっていたので写したのだけど、この公園は保育園児の遊び場でもあり、彼らに気付かれないようにカメラを取り出したつもりだったのに、すぐに取り囲まれてしまった。1枚写したら手を出した子がいて蛾は飛び去って行った。
1枚目はフラッシュ使用で2枚目は自然光。草木の緑が濃くなってくる季節に現れるユウマダラエダシャク。こういった外見の蛾はいろいろな種類にいるようで、いずれも葉に落ちた鳥の糞に似せていると言われている。腹の色も黄色と黒の警告色になっている。
たぶんナミガタエダシャク。1枚目は触角が櫛状なのでオスで2枚目はメスだろう。大きさもずいぶん違った。1枚目から2枚目まで4年経っているが、どちらもサクラやコナラを植えてある公園のそばにいた。2枚目は電話ボックスの外側から写したものなのだけど、気が利かないことに内側から写していなかった。なぜ「ナミガタ」なんだろうか。
1枚目は公園の木道の桁というか基部に、2枚目はイヌシデか何かの幹にベタっととまっていたオオバナミガタエダシャク。「オオバ」が付かないナミガタエダシャクとはあまり似ておらず、後翅の横線が波打っているのが目立つ。いずれも写真の状態で左右の翅頂間が60~70mmもある大きな蛾で5月の下旬から6月半ばにかけてホントによく見る。
ヨモギエダシャクと推定。ソメイヨシノの幹の地上2.5mほどのところにとまっていたのを下から仰ぎ見るようにして撮影。腹が太い印象。
乾いた獣糞にきていたシロオビクロナミシャク。
葉の裏側にばかりとまるので写すのが厄介だった。
ビロードナミシャクの模様にはいつも心惹かれるものがある。
キアミメナミシャクは鳥の糞が垂れて流れているイメージか。
ヒメシャク亜科のヨスジキヒメシャク。1枚目はフラシュ使用で2枚目は暗い自然光。4本のスジがある黄色いヒメシャクで、この状態で左右の翅頂間が15mm程度と小さかった。
5月の下旬から6月にかけて、アカシジミやその仲間を見ようと思って公園に行くと、白くて小さくよく似たヒメシャクの仲間が葉の上にベタっととまっているのを数多く目にする。なかなか種名を判断できない。前翅後翅のかたちや横線や黒点の具合などから種名を判断しているが、果たして合っているのかどうか。
スズメガ科
グラデーションのかかった緑色がきれいなウンモンスズメ。近所の道端に生えているヨウシュヤマゴボウで翅を伸ばしていた。
こちらは砂漠向け迷彩風で渋い色合いのクチバスズメ。交尾しているペアもけっこうよく見た。
ヤガ科
公園管理事務所の窓にとまっていた。
シンプルな印象のミスジアツバ。
昼間から草原で飛んでいたシタバガ亜科のオオウンモンクチバ。前翅中央あたりの斑紋のかたちと、後翅の外側の線がはっきりしていることでそのように判断した。「ウンモン」というのは雲紋だと思うのだけど、どこが雲なのかよく分からない。
なんとなく紫がかったような微妙な色合いのリンゴツマキリアツバ (シタバガ亜科)。たくさんの蛾が属しているヤガ科には下位分類としてシタバガ亜科、アツバ亜科といった亜科も数多い。この蛾には「アツバ」という名前がついているが、アツバ亜科ではなくてシタバガ亜科に分類されている。何か理由があるんでしょう。
こちらはアツバ亜科に属するタイワンキシタアツバと推定したが、近縁種のクロキシタアツバなのかもしれない。「キシタ」とあるのは写真では隠れている後翅が黄色いから。2017年の5月に写したのはこの蛾だけだった。
モンヤガ亜科のオオバコヤガ。やはり朝に見たもので、コナラの幹にとまっていた。角度を変えて写そうとしたから飛んで地面に降りたのでもう1枚撮影。
マメキシタバと推定。コナラの多い森では、夏になるとコシロシタバをよく見る。そのお仲間だろうと思って推定したのだけど、肝心のシタバ(下の翅、後翅)を見ていないので何とも言えない。
コナラの根元に違和感のある黒いものが見えたので、ルリタテハかヒオドシチョウでもいるのかと思って近づいてみると、飛び去って行った。着地点の下生えをかき分けてなんとか撮影。
1枚目は左前を、2枚目は右前を向いており、立てた2枚の翅の丸みのある隙間から表側の模様が覗いていた。おそらく、ルリモンクチバだろう。タテハ蝶のような蛾。
ドクガ科
キアシドクガ。小さな森に入ってみると、数多くの白い蛾がヒラヒラヒラヒラと高さ5~10mくらいのところを舞っていた。モンシロチョウをひ弱くしたような飛び方だった。しばらく歩いていると、羽化中の個体や地面に落ちてジタバタしているのもいた。地面に落ちたのに指を向けるとしがみ付いてきたので撮影。
キアシドクガの成虫、幼虫の写真は別稿に追加しました。
これはスギドクガと推定。この状態で頭の先から翅の先まで25~30mmくらいだった。通勤時(08:30頃)に撮影したものだが、帰宅時(20:00頃)にも、同じお宅の門扉にとまっていた。
その他
メイガ科マダラメイガ亜科のアカマダラメイガ。当初は昆虫ではなくて植物の一部に見えた。長さ12mmほど。近づいてみると目玉が見えたのでマクロレンズで撮影。
ヒゲ(触角)が長いことが特徴のヒゲナガガ科の蛾の中でも特に長いホソオビヒゲナガのオス。都内の平場では4月の下旬から5月の中旬まで発生する模様。
オオミズアオ
おなじみのオオミズアオ (ヤママユガ科)。ヒオドシチョウの蛹の見回りをしていたら、柵の向こうで翅を延ばしているのが見えた。都市部でも、けっこう出てくるもんですね。
朝方の公園にカルガモの雛を探しに行ったら柵にとまっていた。
羽化直後で翅が伸びていない。オオミズアオの羽化は、東京の平場だとだいたい5月の10日から20日のあいだくらいのようだった。この数年は朝の公園に行く機会が減ってしまってあまり見ていないのだが。
ハチの仲間と間違いそうな外観をもつマダラガ科クロマダラ亜科のウメスカシクロバ。名前のとおり、黒くて透明な翅をもち、幼虫はウメやサクラといったバラ科の植物を食草としているらしい。
スカシバガ科スカシバガ亜科のカシコスカシバ。立てた触角、胸部や腹部の色や模様、透明な翅などからハチの一種にしか見えない蛾。名前の由来は、賢いスカシバではなくて、カシの木につくコスカシバなのだろう。
スズメバチなどの黄色と黒のハチは「自分は毒バリ装備の危ないヤツですから近寄らないでね」と色で主張しているらしく、そういう色を警告色というらしい。カシコスカシバが毒をもっているのかどうか分からないが、ハチの警告色と似たことで危ないヤツと思われて生きのびてきたのかもしれない。
おなじみのマエアカスカシノメイガが葉の裏側にはりついていた。ツトガ科ノメイガ亜科に分類されている。
ハマキガ科ハマキガ亜科のトビモンコハマキと推定。小さな蛾。
キバガ科のカバイロキバガと推定。パルピ(下唇鬚) が牙のように立ち上がっているのか特徴なのたけど、場所の都合とこのころはマクロレンズばかり使っていたこともあり上からしか撮れておらず、いまひとつ。
2020年5月は外出自粛で蝶も蛾も写せなかったのが残念。