エゴヒゲナガゾウムシ
うちの近所では毎年夏の土用のころにだけ姿を見せる、エゴヒゲナガゾウムシを今年はまあまあちゃんと写すことができた。
エゴヒゲナガゾウムシは、ヒゲナガゾウムシ科に分類される触覚の長いゾウムシの一種で、オスとメスの顔つきがまるで違う。エゴノキに実がついて膨らんでくると、どこからともなく現れる5mm程度の小さな虫。
メスは牛のような、というか、ある種の犬のようなというか、間の抜けた白い顔をしている。ゾウムシというよりギュウムシか。
オスも白い顔をしており、2本の角が生えているように見えるのだけど、オスの目玉はこの角の先についている。
オスがなぜこういう姿になったのかはナゾだが、頭部を振らなくても上や後ろが見えることに何かメリットがあるのかもしれない。サワガニなんかも水たまりから目玉だけ出してあたりを伺ったりしているし。
まあ、メスの複眼が捉えられる領域もけっこう広そうではあるのだけど。
メスはエゴの実に穴を掘る
メスはエゴの実にしがみついて口を使って穴を掘り、その穴の中に産卵するらしい。「エゴヒゲナガゾウムシの生活史」という卒業論文のサマリによると、メスはすでに産卵済の実は利用しないそうで、そのために入念に果実を検査してから穴を掘るらしい。
おそらく産卵中のメスと、それを見守る?オス。
産卵してるところを近くで撮ろうと思って実を取ったら、エゴヒゲナガゾウムシを振り落としてしまって実だけが残った。申し訳ない。
エゴノキ
ヒトが実を噛んだらエグい(エゴい)からエゴノキということらしい。
エゴノキはありふれた雑木でだいたい5月半ばころにきれいな白い花をつけ、たまにアゲハチョウの仲間が吸蜜していたりする。この花が咲くとそろそろ初夏かなと思う。
7月中旬に写したものだが、まだゾウムシが穴を開ける前の果実。
この果実の皮には、エゴサポニンという物質が含まれていて wikipediaによれば「エゴサポニンは胃や喉の粘膜に炎症を起こし、溶血作用もある」とのこと。その果実を食べて育つエゴヒゲナガゾウムシは、果たして体内にサポニンを蓄えているのかどうか。サポニンには赤血球を破壊する性質があるらしいが、ほとんどの昆虫の血液は赤血球を含まないらしいので、蓄えておくことはできるだろう。まあ、このゾウムシをかじってみようとは思いませんけど。
推薦図書
今年(2020年)の東京地方には「梅雨の晴れ間」というのがほんとに少なくて、雨や暗い曇の日が続いた。ふだんなら、本格的な暑さの前に緑道や公園を徘徊して野のムシたちを撮影している時季だったのだけど、そういうこともできないので本ばかり読んでいた。その中で出会ったのが、とよさきかんじ氏著の「手すりの虫 観察ガイド」という本だった。
(amazonのリンクを置いたらkindle用?になった)。
公園や緑地をめぐってそこかしこで虫を撮ったり触ったり考えたりするという、自分がやっていることをそのまま本にしてくれたような内容で、大人が楽しめる良書です。虫めずる姫君や虫撮りの翁をめざす方は必携。